悪魔な国王陛下は、ワケあり姫をご所望です。





 忙しい中でも毎日欠かさず花を生けにやってくるルイゼルトは何をしているのだろうと、瞼の裏に映る彼の優しい笑顔に包まれながら思いを馳せた。

 

(この会えない時間を恐れたりしない。胸が痛む度に、私は強くなれるから)



 髪飾りを撫でて一人淋しいはずの時間がいつもより穏やかで心地が良かった。



「会いたいな」



 瞼を開けて窓の外に広がる茜色の空に向かって、小さく呟く。



『――俺も会いたい』


「……!」



 風に乗って聞こえてきた声は空耳だろうか。ただ胸いっぱいに広がる熱い思いは、その声を強く感じた。

 あれだけ疲労が溜まっていたはずの体は軋むことなく軽やかに動いた。声が届くところへと体が、心が求めて、居ても立ってもられなくなったファウラは部屋を飛び出した。

 執務室に向かったがそこはもぬけの殻。どうやら今日の仕事は終わっているらしい。

 次に彼の部屋へと向かったが、部屋の前を歩いていたユトに声を掛ける。





< 140 / 187 >

この作品をシェア

pagetop