悪魔な国王陛下は、ワケあり姫をご所望です。
自分よりも少し背丈の高い生垣の道を更に奥へと進み、ガーデンアーチの先に待つガゼポの片隅で人影が揺れていた。
「ルイ」
名前を呼びかけると、振り返った人影は茜色の夕日に照らされる。
駆け寄ったファウラはそのまま抱き着いて、感じる温もりに頬を擦り寄せた。
「ファウラ……?!どうしてここに?!まだ花嫁修業が終わってないとローレンが言って……!」
「ルイの声が聞こえたの」
「俺の……?」
「うん。会いたいっていう想いが聞こえてきたの」
ようやく会えた喜びに抱き着いた腕に力を込めると、逃がさないと言うようにルイゼルトもまたきつく抱きしめた。
会えなかった時間を埋めるように、互いの想いを込めて抱き締めあう二人は何も言わないまま、ただ互いの温もりに溺れていた。