悪魔な国王陛下は、ワケあり姫をご所望です。
(こんなにも時間がないとはな……強欲さはどうやら俺に似たらしい)
自分を奪われそうになるのを抗い続け、方法を探し求めてきた。
今の現状を打破する唯一の方法が見つかった時は喜びで満ち溢れていたというのに、鍵となる存在を愛してしまえば話は変わる。
どんなことがあろうとこの国も、愛する存在も守るという選択しかないのだ。
影で動き出いていた存在が遂に尻尾を見せたというユトの報告にいよいよ最終決戦が迫っている事を知ってしまった以上、戦うしか他ない。
(……俺はなんとしてもファウラを、彼女の笑顔を守りたい。この身が朽ち果てても……)
普段誰にも見せないように身につけている蒼いクリスタルのネックレスを、力が入りにくくなった手で服の上から握り締める。
ファウラの澄んだ瞳に映るのは、これから先も自分で在り続けたいと願いを込めて。
飲まれていく意識の中、愛しいファウラを思い浮かべた。
『大丈夫、絶対私が守るから』
伸ばすファウラのに手を掴もうと、ルイゼルトは彼女の名前を呼んだ。
その声は夜の海に静かに掻き消されて行った――。