悪魔な国王陛下は、ワケあり姫をご所望です。





 何処か神秘的な空気が漂う回廊の壁には神々の絵画が並べられ、威圧的な空気がある城の中でここだけが区切られた空間のように思えた。石柱に刻み込まれた紋様も独特で、思わず見入ってしまう。

 外から差し込んでくる光に石柱は影を濃く落とす。

 僅かにその影が揺れたように見えて思わず身構えると、手に持っていた包みが零れ落ちる。



「その影が見えているのですね」




 突如後ろから声が掛かり振り返ると、石柱の後ろから静かに白いローブの老人が現れた。差し込んでくる光に巻かれた金属の鎖が鋭く光る。



「もう一度問います。その影が見えているのでしょう」


「貴方は……」




 ルイゼルトの執務室に向かっていた影を浄化した時に出会った老人。あの時の気配はやはりこの老人のもので間違いなかったようだ。



「この国の神官長を務めております。ハヒェル・ドスドークと申します」


「神官……」


「はい。私は神の声を聞くことができます」



 ローブのフードを外したハヒェルは、氷像のように冷たく掘られた重々しい表情をファウラに向けた。鋭い眼光に、思わず息を潜める。







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