悪魔な国王陛下は、ワケあり姫をご所望です。




 音が立たないように扉を閉めて薄暗い部屋の中で、窓を叩く雨の音に紛れるよう静かに泣いた。

 ただ雨がいつかは止むように、ファウラも泣くのを止めた。雲の切れ間から見える僅かな空に希望を抱いて。



(大丈夫。きっと何とかする方法があるはずよ。両国の関係は崩さないまま、ルイを傷つけない方法が)



 最後の一粒の涙が頬を伝い、その涙を強く拭った。

 これまでいくつもの修羅場を乗り越えてきたファウラには、絶望を希望に変える方法を見つけてきた自信がある。前向きな気持ちで、机に向かいこれからどうするのかを考えた。

 自分のこの力を消す方法は長い時間をかけないと見つけることは出来ないと判断し、別の方法を模索する。一番手っ取り早い手段は、ファウラがこの国から出ることではあるが、両国の関係を崩す可能性が大きい。

 何より、婚約破棄する事を特別な理由もなしに承諾される訳がない。そうなると、ファウラがこの国から出るというのは中々難しい。



(ただ……それは神官長が真実を話さなかった場合だけ。私が皆に黙っていたことが知れ渡ったらきっと……)



 王宮内での鋭く胸を刺す言葉たちが脳裏に浮かぶ。

 今まで良くしてくれていた人たちが豹変した態度で、言葉を投げつけてきたらと思うと胸が張り裂けそうだ。





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