悪魔な国王陛下は、ワケあり姫をご所望です。
夜の庭園はここに来てから初めてで、月明かりがあるお陰で幻想的な風景に息を零した。
「いつかルイとも夜の散歩もしてみたいな……」
思い返せばルイゼルトの過ごした夜の時間は、心臓がバクバクとうるさくなってしまう記憶しかない。こうやって夜歩くだけでも、きっと彼の魅力に溺れてしまうのだろうと、頬を赤らめた。
いつも見る景色とは違う景色を堪能したところで、また夜風に風邪を引いたら流石にルイゼルトに怒られてしまうと、来た道を戻ろうとした。
「おい。ルイゼルトはどこに行った!」
「部屋はもぬけの殻でした」
「早く探しだせ。奴の中の悪魔には時間が無い。こちらが暴走する前に奴を手なずければ、理想郷はすぐそこだ。致命傷を与えてでも、ルイゼルトを連れてこい」
「はっ」
庭園の奥から聞こえてくる物騒な言葉に、居ても立ってもいられなくなったファウラは物陰に潜んで気配のする方へと進む。