悪魔な国王陛下は、ワケあり姫をご所望です。
何人かが回廊の方へと姿を消し、残った気配はまだこの庭園内を動き回っているようだ。
どこかにいる城の兵士を呼んでこの非常事態を切り抜かなければと、月が雲に隠れ身を潜めやすくなったのを見計らって動き出そうとした。
『グシャアァッ!!』
「!!」
音に反応したファウラは両手を前に力で飛びかかってくる何かを弾く。衝撃に転がって行った何かは、そのままファウラを無視して茂みの中に消えた。
「何者だ!!」
「探せ!!」
生垣の向こうから近づいてくる足音に、ここにいては気づかれると走り出す。
雲の隙間から月が顔を出し、ファウラの足元には影が落ちる。揺れる影は怪しく動く。
気づいた時には、影は己の姿になってファウラに襲い掛かる。
(間に合わないっ!)
力を使う暇なく痛みを覚悟したが、風を切る音が辺りに響いた。