悪魔な国王陛下は、ワケあり姫をご所望です。
恐る恐る周囲を確認すれば、暗闇を操るような迫力を纏ったルイゼルトが切った影を睨みつけていた。
「ルイ……!」
「こんな所で何してる!体調は!そんな格好で外を出歩いたら、悪化するだろ!こんな事になってなければ俺の寝室に連れ来んで、このまま朝まで帰さないってのに!」
一体何に怒っているのかよく分からないでいると、急にファウラの元へ走ってきたルイゼルトは彼女を通り越して、剣を月明かりに輝かせるように振るった。
聞こえてきた呻き声に耳を貸すなとでも言うように、ルイゼルトはファウラの手を取って走り出す。
「ったく、時を見計らって動き出すとは、俺はよっぽどの恨みを買ったらしいな」
「ルイ!何がどうなってるか分からないけど、まずは兵を集めて対処しないと、ルイの命が危ないわ!」
「そうしたい理由は山々なんだけどな。そうできない理由があるんだ」
「理由って?!こんな事態になって動かない兵なんていないわよ!」
庭園から城の中へと入り、周囲を見渡すと篝火を焚いて緊張感が走っている兵の姿を見つけたファウラは声を掛けようとするがルイゼルトは開かれた口を塞ぐ。
「陛下を見つけたらすぐ捕えろ!」
「悪魔がこの国を滅ぼす前に見つけ出せ!!」
衝撃的な言葉に思考が止まる。だが、こうはしていられないとルイゼルトはファウラの手を取り走り出す。