悪魔な国王陛下は、ワケあり姫をご所望です。



 息が切れるのも忘れて走って辿り着いた場所は、ルイゼルトのもしもの時に備えた隠し通路だった。身を潜めながら、周囲がどんどんと騒がしくなっていくのを聞くしか出来ない。



『殿下が持つ力に誘われ影が集まる。主の憑代となる力を求めて、人間に巣食うのです。それを行っている張本人は、殿下――貴方なのですよ』



 ハヒェルの言葉が鮮明に脳裏に浮かんだ。影の存在を呼び出し、この事態を生み出している自分に気が付いたファウラは繋がれた手をどうしていいのか分からなくなる。

 
(私の力のせいだ……)


 ルイゼルトは狼狽えるファウラの頬を両手で包んで額を合わせた。



「悪い。こんなことに巻き込んで」



 謝るルイゼルトにファウラは違うと声を上げた。



「謝らなきゃいけないのは私の方なの……!私、小さい時からずっと悪しき穢れの力っていう人には見えないものが見えていて、その力が影を呼び寄せて……こんな事になるなら、もっと早く伝えておけば良かった。隠しててごめんなさい、ルイ……私、私――!」


「ファウラの力にそんな力はない。俺がずっと探し求めていた聖女の力だ」


「え……」



 ファウラの言葉を遮って抱きしめたルイゼルトは宥めるように、背中を撫でた。





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