悪魔な国王陛下は、ワケあり姫をご所望です。
嫌われ陛下に全ての愛を
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先程見えたルイゼルトの姿を追いかけて、辿り着いたそこは大きな女神像が祀られる礼拝堂だった。流れる重々しい空気とは違い、普段は神聖な空間であるはずの装飾達は穢れに染まりたくないと、この空気を拒絶しているようにも見えた。
祭壇の上には巨大なアメジストの魔石と共に鎖で繋がれたルイゼルトがそこに居た。
「ルイッ!!」
意識のないルイゼルトはファウラの呼びかけに反応することもなく、最後に見た時よりも広がった茨の痣に顔を顰めていた。思わず駆け寄ろうとしたが、弾かれる力が着ている服から露出している皮膚にかすり傷を与えた。
僅かに滲んだ血が、静かに流れていく。
「無駄です。もうルイゼルト王は悪魔に身を捧げたのです。このまま我らの意のままに動き、朽ち果てるまで働いて頂きます」
祭壇の奥から姿を現したハヒェルが赤子を撫でる手つきで魔石に触れ、ファウラを睨みつけた。揺れる鎖はまるで挑発するようにわざとらしく音を立てる。
そんなハヒェルに抗うように、ファウラは静かに怒りを示す。
「貴方は自分が何をしようとしているのか分かっているの?」
「ええ。神の導くままに動いているだけですから。神殿の地下深くに眠っていた我が神を呼び起こし、挙句の果てに神を消し去ろうという野蛮な考えを抱いた盗人には丁度いい結末でしょう」
ルイゼルトに向かって嘲笑うような笑みを浮かべた。抵抗しないことをいいことに、彼の髪を掴んで顔を上げさせた。苦しむもがく顔を見たハヒェルは滑稽だと呟く。