悪魔な国王陛下は、ワケあり姫をご所望です。
嵐と紅い目
*
馬車に揺られて数刻。
ここから先向かうのは、クラネリシア王国のと国境に位置するサンゼリオの町。そこで向こう側の出迎えと合流する予定になっている。
テリーハルテンから身を隠すことも含めて、外の世界に触れて来なかったファウラの目には、窓の外に流れる世界がとてつもなく広く感じた。
(外の世界がこんなにも綺麗だって思うのも、久々ね……)
綺麗だと感じたものを街の皆にも見せてあげたいが、街からはどんどんと離れていく。近づいてくるのは、全く知らない世界。
知らない世界に向かっていても不思議と不安は無かった。いくつもの修羅場を乗り越えてきたのだから、これくらいどうってことは無かった。
そんな強い気持ちを持つファウラだったが、到着したサンゼリオで良からぬ出来事が待ち受けていた。
「え……山賊?」
クラネリシア側の出迎えはなく、ファウラを待っていたのはサンゼリオの町長だった。
出迎えを城からの使いは、突如現れた山賊との衝突を避けるべく迂回ルートを使っているらしく到着に遅れを取っていると、早馬での知らせが今朝入ったという。