悪魔な国王陛下は、ワケあり姫をご所望です。





 同じ魔法陣がルイゼルトの胸元に刻まれ、叫んでいたルイゼルトは途端に大人しくなった。

 あれだけ鳴り響いていた地響きもピタリと止んだ。

 それは、ほんの一瞬に過ぎない。



「な、なに?!」



 ハヒェルが描いていた魔法陣が斬り裂かれるようにして消えた。

 同じようにルイゼルトの胸元に描かれていた魔法陣も消え、そこを拭い去るように影が流れ込んでいく。

 全てを体内に取り込んだ悪魔は耳を劈くように、咆哮を上げた。この世にある物を手に入れたい強欲そうな真っ赤な目は、光を宿しては居なかった。
 
 何もかもを飲み込んでしまいそうな闇がルイゼルトを包み込み、その闇に魔法石は打ち砕かれ宙に浮遊した。



「使役できないだと……?!はは……ははは、はっはははははッ!!」



 壊れたように笑い転げるハヒェルは、ルイゼルトを前にひれ伏せた。もうこれ以上は抗うことはしないと、地面に頭を擦りつける。



「破滅だ!神は世界の滅びを望んでいる!!ああ……なんと、なんと素晴らしい!神の示す道に、どうかっどうかこの私奴をお導き下さい!!!」



 ハヒェルの声を掻き消すように再び更に強い地響きがし始め、天井が崩れていく。






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