悪魔な国王陛下は、ワケあり姫をご所望です。




 怒りを……憎悪を、投げつけるように。

 心の奥底に眠っていた悪魔が解き放たれたルイゼルトは血を浴びて我に返った。



『信じた心を持った俺が、愚かだったのか』



 なら、自分の力だけで自分を犠牲にして生きていけばいい。

 そうすれば誰かから何かを奪われる事はもう何も無くなると、ルイゼルトは自分の心に鎖を巻き付けた。

 嫌われ者になろうとも、それが国を守るためになるのならなんでもいいのだと。



「そうやって一人、全てを抱え込んでいたのね」



 それまであった光りがファウラの声に反応するように薄れ、暗闇の奥で何千と生き、黒く身を染めた大樹の幹に鎖で縛りつけられたルイゼルトは静かに泣いていた。

 過去に囚われ、悪魔に心を支配されたままずっと戦ってきたのだ。

 これ以上失いたくないと、強く強く願いながら。


「ルイ、貴方は嫌われ者なんかじゃない。守りたいものを強く想う優しい人だって気づいてくれている民もいるの」


 ゆっくりとルイゼルトに近づいて心に語りかける。


「これ以上自分を犠牲になんかしないで。これからは私がルイの隣に立つんだから、痛みも悲しみも分け合って進んでいくの」


 ジャラ……と揺れる冷たい鎖に熱を込めるように触れてから、ルイゼルトの頬に触れて涙を拭う。



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