悪魔な国王陛下は、ワケあり姫をご所望です。
紡ぐ歌声はキラキラと輝き、戦慄が光を放つ。
これまで忌み嫌われてきた自分の力が、こんなにも大切で愛する人を守れる大きな力になろうとは思いもしなかった。
それを教えてくれたルイゼルトの硬い表情が、少しずつ解れるように温もりを取り戻していく。
「大丈夫、絶対私が守るから――愛しているわ、ルイ」
その言葉と共に、弾けた鎖が宙を漂う。
ファウラの浄化の力に癒された暗闇は音を立てて崩れていく。
息を吹きかけるような軽い口づけをすれば、ルイゼルトの中から影が消えていった。彼を縛っていたものが、花のように舞いファウラの体の傷を癒して、幸せが待つ未来の光へと流れていく。
崩れていく暗闇でルイゼルトを守るように抱きしめたその直後、ふわりと月夜が吹く風を感じた。
ルイゼルトを助けられた安堵に息を吐こうとしたが、只ならぬ殺気に振り向くことしか出来ない。
「神の邪魔をするなあぁあああああっ!」
呪いの暗闇から脱したファウラは、突如こちらに向かって短剣を向けて走ってくるハヒェルの存在に気付く。
力を使って身を守れるような余裕もない程に、距離を詰めてくるハヒェルの目には怒りと絶望を抱いていた。