悪魔な国王陛下は、ワケあり姫をご所望です。
抵抗してくる存在が無くなったと、ルイゼルトは怒りを静めて剣を鞘にしまった。
月明かりに照らされた紅い瞳はハヒェルはもうどうでもいいと、すぐにファウラを映しだす。
「ファウラ」
優しいその声に名前を呼ばれ、胸がいっぱいになる。
駆け寄って抱きつきたいが、思いのほか体力を消耗したのか前に足を一歩踏み出すだけでも足が覚束ない。その場に倒れそうになるが、落ちついた様子のルイゼルトが抱き上げた。
真剣な顔で見つめるルイゼルトの首に腕を回して、強く抱き寄せた。
「おかえり。ルイ。私……信じてたよ」
「ああ。ただいま」
温かい頬が擦り寄せられて、幸せな気持ちに思わず笑みと、一粒の涙が溺れた。
涙を拭うようにそっと目尻に口づけられる。顔を上げてしっかりとルイゼルトを見れば、吸い寄せられる紅い瞳に幸せそうなファウラが映っていた。
そんなファウラにどこか申し訳なさそうな表情を浮かべたルイゼルトの頬を両手で包む。
「……守りたいと思っていた人に守られるなんてな。どうにかしようとしていたつもりが、結果はこれだ」
「だって私達夫婦になるのよ?困難を一人に背負わせるなんて事できるわけないじゃない」
「もうこんな危険な目にファウラを巻き込むのは二度と御免だ……」
「それは私も一緒よ。ルイが悪魔王だろうがそうじゃなかろうが、一人で戦わせるなんてまっぴらごめんよ」
ルイゼルトを失う恐怖に勝るものなど無い。それは彼にとっても同じ事で、二人は強く抱きしめあう。
もう絶対に離れないとでも言うように。