悪魔な国王陛下は、ワケあり姫をご所望です。
花嫁姿のファウラに申し訳なさそうに言葉を放つ町長に、ファウラは気にするなと笑って答える。散々不幸に振り回され慣れている彼女には、こんなの虫刺されよりも可愛らしいものだった。
「ここより先にマージェという町が有ります。そちらの町にて合流をということです。町の者が代わってお送り致します」
休憩がてら町を案内してもらいながらここまで送ってくれた御者にお礼を言った後で、再び指定された町へと向かうべく馬車に乗り込んだ。
鬱蒼とした森が続き、舗装されていない道は大きく馬車を揺らす。慣れない揺れに気分が悪くなったファウラは、小さく窓を開けた。
入ってくる風は気持ち良いのに、どこか冷たい。
気分が良くなっていくのを感じながら、ファウラは真剣な表情で窓の外を見つめた。
馬車の揺れる音と、町からの付添人が馬を走らせる音――聞こえてくる音に、どこか違和感を感じる。静かすぎる森に疑問を抱いていると、妙な胸騒ぎに襲われる。
何度も感じてきたこの胸騒ぎは、いつも危険を連れてやってくるのだ。
(何かおかしい……)
全神経を研ぎ澄まさせ、周囲を確認しようと窓を大きく開けた時、進む道の先で何かが怪しく光った。