悪魔な国王陛下は、ワケあり姫をご所望です。

突然の再会






 一時はどうなる事かと心配したクラネシリア国までの旅はどうにかこうにか無事に王都に辿り着き、見えてきた城の気高さに圧巻される。

 大陸の半分以上を支配下にした、国の太陽と獅子の王家の旗が、風に我を示すように力強く靡いていた。

 悪魔王と呼ばれるルイゼルトが統べる世界にやって来たのだと改めて実感する。

 城を守る厳重な門を通り向けると、ファウラを乗せた馬車を出迎えた大勢の兵士や家臣団にいよいよだと気を引き締める。ゆっくりと停止する馬車にここまで送ってくれたことに感謝して、扉を開けて城へと案内する侍従の手を取りファウラは優美な所作を意識しつつ馬車を降りた。

 地面に敷かれた絨毯は、クラネリシアの貴色とする赤に、金糸で見事な刺繍が施されたもの。その上を一国の王女として、悠然とした態度で歩く。

 城の中へと足を踏み込むが、最もファウラを出迎えるべき人物が居ないことに少々疑念を抱く。



(国王が出迎えないなんて、もしかして愛想の無い人だったり?いや……大国では、こういう仕来りがあるってことにしておこう)




 何にしろ、これから夫になる人間に会ってもいないのに不満を感じてしまうのはどうかと、考えることを無理止めた。どんな男にしろ、愛してみせると強く思いながら。

 暫く歩いて、前を歩く侍従にどこからか現れた兵士がそっと耳打ちする。チラリとファウラを見て、頷き合うと侍従がファウラに向き直り足を止めた。

 首を傾げて僅かに身構えるが、侍従はお構いなしに侍女を呼びつけた。侍女達はファウラを取り囲むようにして謎の圧力をかけるように迫ってくる。



「ファウラ様、少し髪が乱れております。整え直しましょうか」


「えっ」


「陛下にも、少々お時間を頂くよう伝えておきます。ファウラ様、”ごゆっくり”どうぞ」



 どういう持て成し方だと慌てるファウラを、侍女達はお構いなしに部屋へと連れ込んで行く。









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