悪魔な国王陛下は、ワケあり姫をご所望です。
「ちゃんと説明して」
「はあ……こんなことになるならちゃんと……」
「なに?よく聞こえないんだけど」
ぼそぼそと何かを呟くルイゼルトは、知ったことかと口を閉ざす。どこか子供のような態度に、ファウラはどうしたものかとルトへと視線を送るが、彼もまた事態を飲み込むのに必死のようで当てにならない。
嫁いで来て早々こんなことになろうとは。王女の仮面を外してしまったからには、もう遠慮するつもりもない。ここは納得がいくまで話し合おうと、再びルイゼルトの瞳を真っ直ぐに捉える。
(あれ……体が言う事を聞いてくれない……)
力が抜けるような感覚に思わず、ルイゼルトから視線を逸らした。体内を流れる血から熱が奪われて、体が冷たくなっていくようだった。呼吸は徐々に乱れ、胸が締め付けられていく。苦しみから逃れようとも、迫ってくる力はファウラを掴んで離さない。
充満する悪しき穢れの力が広がっていることに気が付かなかったのだ。
ぐらりと傾きそうになる体を、鋭い目からは想像もつかない温かい温もりがファウラを包み込んだ。
心配そうに見つめてくる彼の瞳は、相変わらず不思議な力を秘めていて、ずっと見つめていたかった。ただ、そうしていられる体力は、ファウラには持ち合わせてはおらず、閉じていく瞼に身を委ねることしか出来なかった。
遠のく意識の中、彼がファウラと名前を呼ぶのははっきりと聞こえ、答えようにも彼女の意識は底なし沼のように深い何かに引きずりこまれていった。