悪魔な国王陛下は、ワケあり姫をご所望です。
「ファウラ!!」
――そんな彼女が、今ルイゼルトの腕の中で横たわっている。あの力強く魅せてくる瞳は重たい瞼によって隠されたまま。名前を呼んでも瞼が開かれることは無かった。
山賊を仕留め、城に戻ってきても蒼い瞳が忘れられず、そんな状態で婚約者とどう顔を合わせていいのか分からずにいたルイゼルトは、最悪嫌われる覚悟で謁見の間に訪れた。
こんな形の再会など、望んでいなかった。心配する言葉も上手く言えず、ぶっきらぼうな状態で接してしまったのだから。
怒っていた彼女には自分がどう映っているのか分からない。
ただ、もう一度会えた花嫁にルイゼルトは少なからず……幸せを感じた。
不運な運命の歯車を大きく変えてくれる、そう本能がうるさい程に訴えてくる。
「急いで侍医を呼べ!ユト!お前は家臣達に今後の予定が遅れる旨を説明してくれ!」
「はっ!」
再び違う慌ただしさに城が包まれていく。バラバラに動いていた足音は皆、一つの目的に向かって重なり合う。
抱き上げた少女の温もりを今度は絶対に離さないように、ルイゼルトは抱き上げた小さな花嫁に優しく力を込めた。