悪魔な国王陛下は、ワケあり姫をご所望です。
完成した自分の姿にファウラは思わず声を漏らしていると、軽やかに扉が叩かれる。
「終わりましたか?」
「あ、お見えになりましたね」
一人の侍女が扉を開けて、中に入ってくる人物に深く頭を下げた。
現れた男性に、記憶をフル回転させて彼の名前を思い出す。
「おはようございます、ファウラ様。元気になられたようで良かったです」
「おはようございます、ユト様。昨日はご迷惑をお掛け致しました」
綺麗に一礼を捧げるユトに、淑女らしく振る舞うと彼はとんでもないと首を横に振った。何とか名前を思い出せたファウラは、内心自分に拍手を送った。
「ドレスも大変お似合いです」
その言葉に、もしかしてこの人も荷物の中身を見たのかと背中に冷や汗が流れる。
ただそれ以上何も言ってこない紳士的な対応に、本来はこうするのが普通だとルイゼルトを恨んだ。
朝食を済ませた後に、昨日は出来なかった城内の案内をする予定らしく、ファウラを迎えに来てくれたらしい。今日はルイゼルトは執務に追われるらしく、案内をユトが任されたという。
あれ以上ルイゼルトと関わらずに済んだことにほっとしつつ、白い花の香りに少しだけ彼の瞳を思い出す。
(……悪い人ではないのかな)
そう思いたいが荷物の件やらのやり取りを思い出し、即座に脳内からルイゼルトの存在を消し去ったのだった。