悪魔な国王陛下は、ワケあり姫をご所望です。
(侍女達は気合いを入れるとは言ってはいたが……気合いを入れすぎだ。くそ、つい見惚れてしまったっ!)
などと内心、動揺しているのはルイゼルトも同じということは、ファウラは気づくはずもない。
咳払いを一つして、シェフに朝食の準備を声かけるルイゼルトに、このまま一緒に食事をするという事を悟る。思いもよらない顔合わせに、勢い任せでお礼を伝えるべきか考えたが、唇を結ぶように口を閉じる。
侍女達は口止めされていたことをファウラが知っているとなれば、話は益々ややこしいことになる。余計な事を言って怒らせれば、彼女達もとばっちりを受けてしまう。今は言うべきではないと、まだ冷静さが残る脳内に強く警報を鳴らした。
席に着き、運ばれてきた朝食を二人で囲むが、何を話していいのかも分からず、ただひたすらに食事に集中するしかない。
無言のまま朝食の時間が過ぎていくのだろうかと気持ちが重たくなるが、思いのほかルイゼルトから声を掛けてきた。
「……城での生活は慣れたか?」
ぶっきらぼうに吐き出した言葉の中に、ルイゼルトなりの気遣いを込めた言葉だというのは分かってはいたが、威嚇するような低い声にファウラは緊張して言葉が喉に詰まる。はい、とだけ短く答えるだけで精一杯の彼女の反応に、ルイゼルトの表情は冷たくなっていった。