悪魔な国王陛下は、ワケあり姫をご所望です。
温かい朝食を摂っているというのに、二人の間には凍える空気が流れていくばかり。そのすれ違う様子に、ユトが痺れを切らして声を掛けてきた。
「そう言えばファウラ様。この前まで蕾だった庭園の花が、ようやく今朝花を咲かせましたよ」
「本当?後で見に行ってもいいかしら?」
「もちろんです。ご案内させて貰いますよ」
「へ、陛下も一緒にどう……?」
「……俺は、別にいい」
意を決して誘ってみるが、一人の壁を作るようにルイゼルトはファウラを見ようともしない。せっかく目の前に美味しい朝食があるというのに、それを台無しにしている事に気づいて、ファウラは勇気を振り絞って自分から彼に声を掛けた。
これでもしかしたら距離が縮まる……そう願って。
「陛下、っと……その……花も綺麗だし、食事も美味しいし、侍女達も仲が良くて頼もしい人達ばかりよ。まだ広い城内に戸惑うこともあるけど、毎日楽しい生活を送らせてもらってるわ。……その、ありがとう」
最後の感謝の言葉は、気恥しくてボソリと呟いてしまうだけになったが、とりあえず言おうとしていた気持ちを何とか紡いだ自分に、拍手を送りたかった。赤くなる顔を隠しながら、そっと俯くように頭を下げると、一瞬だけルイゼルトの食事の手が止まる。
すぐにその動きは再開したが、ファウラの目を見ることなく言葉を発した。