悪魔な国王陛下は、ワケあり姫をご所望です。
「――俺の妃になるんだ。何不自由ない暮らしを与えるのは当たり前だろう。欲しいと望む物全てを、くれてやる」
「……え」
「なんだ?現に不満があるなら言え。飯でも花でもなんでも、金の力で全て解決出来るんだからな」
悪い人ではない、そう思っていた人から聞きたくない言葉を聞いてしまった。蓋をしていた父親である横暴な国王の記憶が蘇ってくる。
ファウラの母親を手に入れてから、お気に入りの玩具へ金の力を見せつけては、母親の心を支配しようとしていったあの下衆な顔は今でもはっきりと覚えている。
大切なのは人を想う気持ちということを知らない哀れな男の事を何度睨みつけても、自分の父親だということを変えられない事実に腹が立ったことも、鮮明に覚えている。
そんな国王と似たような言葉を、少しずつ知ろうとしていた彼の口から吐き出して欲しくはなかった。
(私が金の力で魅了される女とでも思ったの?)
栄養を考え食べる人の喜ぶ顔が見たいと食事を作るシェフも、自然を愛しそこに咲く花を愛でる庭師も、そこに想いがあるからこそいい物を生み出していく。どれだけいい食材を揃えても、いい花の苗を揃えても、感動するものを作り出す人がいなければいけない。
作り出す人の想い、それは決してお金で買えるものではないのだ。
彼らの気持ちも踏みにじられたようで、ファウラの中で何かが煮え滾る。