悪魔な国王陛下は、ワケあり姫をご所望です。



 途中庭園の方から入ってくる花の香りに、自室に飾られた花を思い出す。



「違う……あの人は悪い人なんかじゃない」

 

 初めて出会ったあの時もファウラを助け、倒れた時も付きっきりで傍に居てくれ、慣れない場に安らぎを与えるように花を置いてくれた。

 嫌味を投げつけてこようが、 政略結婚の都合上で、無理やり偽物の優しさを与えていようが、忌み嫌われてきたファウラにとってはその小さな優しさに救われていたのだ。

 例え、父親と同じような言葉を口にしていたとしても、全てが一緒なわけではない。想う心はルイゼルトにはあるのだから。



「なのに私ったら、一人怒ってあんな態度を……」



 誰かと一緒に食事を囲みたいと思い、それの願いが叶ったというのに、顔を合わせるのが恥ずかしい、気まずいという感情で本当の気持ちを隠していた。ようやく伝えられた感謝の言葉も、声が小さくなってルイゼルトには上手く伝わっていない。

 伝えたい気持ちばかりが空回りしているのに、ようやく気づいた。

 悪魔王に対して反抗的な態度を取ったのも、中々にまずい気がしてきた。



「次会った時は、ちゃんと気持ちを伝えなきゃ」



 小さく溢れていた涙を拭い、気持ちを切り替えるように強くしっかりと歩いて、自室へと戻っていくファウラに頑張れとでもいうように、庭園の花達が風に揺れていた。






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