悪魔な国王陛下は、ワケあり姫をご所望です。
ミミズのような力ない文字にならないよう、体力は底を突きそうだが気合いだけで乗り切ると、窓の外はいつの間にか茜色の空に染まっていた。それでも目の前には、片付かない書類の山がまだあることに肩を落とした。
こんなことで根を上げていれば、今後もっと自分がしんどい思いをするだけだと手を動かす事は止めなかった。
ユトが休憩を促すが、まだ大丈夫だと言いきって何とか書類の山を撃破した頃には、もうすっかり空は夜に支配されていた。
「お疲れ様です。これで全ての書類が完成しました」
「終わったあ~……」
「これから夕食に致しましょうか」
「まずは少し休みたいから、部屋に戻るわ」
ユトのエスコートももう要らないと、一人自室へと頼りない足取りで戻っていく。薄っすらと浮かぶ月を見つめて、我ながら頑張ったとそっと微笑む。
「畑仕事で体力鍛えておいて正解だったかも」
集中力が続かないことは、元より分かりきっていたがこれからの課題だと、凝り固まった体を解すように大きく伸びる。見えてきた自室に、不思議と足取りは軽くなる。
部屋に入れば、大好きな花の香りが胸いっぱいに広がっていく。