悪魔な国王陛下は、ワケあり姫をご所望です。
こんな自分に構う義理が何処にあるのかと、今までの行動を後悔するばかり。
ここに来てから、ルイゼルトを困らせることばかりしてきて、お礼も謝罪も言えていない。次に会えたら、と自分から行動しようもとしていなかった。
「行かなきゃ」
感じていた疲れは何処かに消えていた。鏡の前で、髪の崩れがないか確認して部屋を飛び出した。
寝る時間になってもいつも明かりがついているその部屋へと一直線に向かう。あそこがルイゼルトの執務室であることは、誰かに聞かずとも分かっていた。
辿り着いた彼の部屋の前で、一つ深呼吸してから扉を叩く。
「入れ」
凛とした声に一瞬ドキリと胸が高鳴る。それでも、伝えたい気持ちを伝えるため逃げ出さずに、扉を開けて中へと入る。
燭台に照らされる手元に集中しながら、こんな夜遅い時間になっても平然と仕事を続けるルイゼルトがそこに居た。
「ユト、軽食は後で――」
「へ、陛下……」
「っ……!」
予想していた人物とは異なったファウラの声に、驚いて作業を止めて彼女を見つめた。