悪魔な国王陛下は、ワケあり姫をご所望です。
「なんだよ、その顔」
「いや……出会った時から何かと、私の事嫌ってると思ってたから……」
拍子抜けて思わず笑って答えると、ルイゼルトはくしゃりと前髪をかき上げる。
「そっちこそ、俺の事嫌ってるだろ」
「えっ?なんで私が陛下を嫌うの?」
「あのなあ……態度を見てれば分かるだろ、それくらい」
「ごめん。全然身に覚えがないわ」
「……嘘、だろ?俺が悪魔王と呼ばれている男と知っていてもか?」
「誰かになんて呼ばれていようが、私には嫌う理由がないわ」
確かに嫌味ったらしい言葉を投げつけられて、ムカムカとしたことは覚えている。だが、そんな些細な事で人を嫌う程、ファウラの心は狭くない。
それにルイゼルトという人を良く知らずに全てを否定するように嫌うというのは、ファウラには出来るわけがない。
(私達は互いを知らないから、どこかで一線を引いていた……だったら、知っていけばいいんだわ)
扉の前から移動して椅子に座るルイゼルトの元へ歩み寄り、ペンを握り締める彼の手に触れた。振りほどこうと思えば振り払えるファウラの手を見つめた後、彼は真剣な面持ちで彼女の瞳を見つめてきた。