悪魔な国王陛下は、ワケあり姫をご所望です。
ファウラの小さく紡ぐ言葉は、日頃楽しくユトと過ごしている事を伝えてくるようでそれ以上は聞いていられる自信が無かった。これ以上ユトに取られたくない、自分にできることを示さなければと、その言葉を口にしていた。
『欲しいと望む物全てを、くれてやる』
だから、満足のいく生活を与えてやるからそれ以上遠くへ行くなと、子供のようにルイゼルトの心はいじけていた。大抵のものは支配してきた彼にとって、この方法以外知らなかったのだ。
だが思っていた反応とは違った。ファウラは怒って、ダイニングルームから出て行こうとする彼女を引き留めることも出来ずに、出て行く直後に吐き出した言葉の意味を今理解した。
「幸せになる道を一緒に歩んで”ほしい”か……」
欲しいものが全てお金では買えない、ファウラの言った言葉は本当だった。
確かにこればかりはどれだけ金を注込んだとしても、買えるものではない。
嫌われているのだから、そんな道はあるわけないとそう思い込んでいたルイゼルトにとっては大きな誤算だった。あんなに真っ直ぐ見つめてくる人は、かれこれ久しく見ていないせなのかもしれない。
出来るならそうしたい、だが背負ってるものを考えるとファウラの手を取ることは出来ないのだ。
「はあ……俺はどうしたらいいんだ」
感情を揺さぶられる相手から好きになりたいなどと言われれば、考えていたことを全て白紙にしてその手を取ってしまいそうだ。