悪魔な国王陛下は、ワケあり姫をご所望です。
そんな見られている事も知らないファウラは、この場でルイゼルトに魅了されて変なステップを踏まないように必死だ。ただ、そんなファウラを優雅に踊りやすいようにエスコートする、腰に回された手はいつも以上に優しい。
周囲のファウラに送られる視線に気づいたルイゼルトは、ぐっと腰を自身に近寄せた。
「まったく、俺以外を悩殺すんな」
「え?」
「ファウラの全部は俺のものだ。それを忘れるなよ?」
「私は陛下の妻以外になる予定はないんだけど……」
「……っ、あーくそ……。だが、いい心構えだ」
何処か嬉しそうに笑うルイゼルトと視線を合わせ、少しだけ体を反らしてダンスを終わらせる。一曲分しか踊っていないというのに、心臓がやけに跳ねていた。
周りからの拍手を貰い、優雅に淑女の礼をすると、ルイゼルトの周りには人が集まり始めた。拝謁では時間が足りなかった貴族達が、次々と声を掛けていく。