それは手から始まる恋でした
プロローグ
酔っ払いが行き交う繁華街。
俺はビルの隙間にあるゴミ溜めの上に腰を下ろしていた。
意気地なしの何も言えなかった俺はゴミ同然だ。
通り過ぎる人々はそんな俺に目もくれず夜の街へと消えていく。
たった一人彼女を除いて。

俺はペットボトルを差し出す彼女の透き通るような手に触れずにはいられなかった。
絹のような手触りで程よい柔らかさの彼女の手で冷たくなった手が温められていく。

この手を放したくない。
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