それは手から始まる恋でした
「戸崎さんのこと好きなのか? い、い、いつの間にそんなことに?」
高良が動揺している。
「私、戸崎さんのことは人として素敵な人だなとは思いますが、異性としての好きと思ったことは一度もありませんよ」
「またまたぁ。波野さんも今日だけいいよ。手繋いであげるから」
顔色一つ変わらないから今まで気が付かなかったけれど、戸崎さんは酔っぱらっている。
高良と鮫島さんが目を合わせた。
「鮫島、時間だ。帰れ」
「ラジャー!」
鮫島さんは酔っていなかった。すっと目を大きく開き、高良に敬礼すると戸崎さんを連れてタクシーに乗り消えていった。
「本当に戸崎さんの事は好きじゃないんだろうな」
「違います」
「じゃあ好きな人は誰なんだ?」
「それは……いません」
「はぁ。可愛くない」
「可愛くないと言いながらなぜ人の手を握るんですか?」
「さあな」
「離してください」
「嫌だ」
「誰かに見られるかもしれませんよ」
「紬が落ちるなら既成事実ってのもありかもな」
「なしです!」
高良は手を離してはくれなかった。私は高良と手を繋いだまま人のいない道を歩いていた。自然の中を歩くのは気持ちがいい。そしてこんな日が再び訪れるとは奇跡としか言いようがない。でも本当に私は再びこの手の中に飛び込んでいいのだろうか。
いや、いいのだろうかではない。私がどうしたいかだ。私は素直になって彼のもとに戻りたい。別れたあの時よりも私は成長しているはずだ。誰になんと言われても高良を信じて彼と向き合ってこれからの道を歩んでいきたい。それが短い間だったとしても最後に笑ってさよならを言えるのならば私はもう一度彼に触れたい。
私は少しずつ高良との距離を縮めていった。寄り添って歩く二人には会話はいらなかった。ただ側にいられたらそれでいい。
「クシュン」
「寒いのか?」
「うん。ちょっと」
高良は私の後ろに回り私を抱きしめながら着ているコートで私を包んだ。高良の体温で体が温まる。誰もいないこの空間だからこそできる二人だけの秘密の時間。
「ずっとこうしていたい」
「私も仁と離れたくない」
高良の抱きしめる手に力が入った。キスをするでもなく私達は、ただただ暫くそうしていた。
「もう一度俺の彼女になってくれませんか?」
「なんで敬語なの?」
「いや、何となく。ちょっとビビってるからかも」
「顔見せて」
高良はコートで私を包んだまま、ぎこちない動きで私の前に回り込んだ。
「これでいい?」
「近い」
「だってまだ放したくない」
私はコートの中で高良を抱きしめた。
「私を彼女にしてください」
高良が動揺している。
「私、戸崎さんのことは人として素敵な人だなとは思いますが、異性としての好きと思ったことは一度もありませんよ」
「またまたぁ。波野さんも今日だけいいよ。手繋いであげるから」
顔色一つ変わらないから今まで気が付かなかったけれど、戸崎さんは酔っぱらっている。
高良と鮫島さんが目を合わせた。
「鮫島、時間だ。帰れ」
「ラジャー!」
鮫島さんは酔っていなかった。すっと目を大きく開き、高良に敬礼すると戸崎さんを連れてタクシーに乗り消えていった。
「本当に戸崎さんの事は好きじゃないんだろうな」
「違います」
「じゃあ好きな人は誰なんだ?」
「それは……いません」
「はぁ。可愛くない」
「可愛くないと言いながらなぜ人の手を握るんですか?」
「さあな」
「離してください」
「嫌だ」
「誰かに見られるかもしれませんよ」
「紬が落ちるなら既成事実ってのもありかもな」
「なしです!」
高良は手を離してはくれなかった。私は高良と手を繋いだまま人のいない道を歩いていた。自然の中を歩くのは気持ちがいい。そしてこんな日が再び訪れるとは奇跡としか言いようがない。でも本当に私は再びこの手の中に飛び込んでいいのだろうか。
いや、いいのだろうかではない。私がどうしたいかだ。私は素直になって彼のもとに戻りたい。別れたあの時よりも私は成長しているはずだ。誰になんと言われても高良を信じて彼と向き合ってこれからの道を歩んでいきたい。それが短い間だったとしても最後に笑ってさよならを言えるのならば私はもう一度彼に触れたい。
私は少しずつ高良との距離を縮めていった。寄り添って歩く二人には会話はいらなかった。ただ側にいられたらそれでいい。
「クシュン」
「寒いのか?」
「うん。ちょっと」
高良は私の後ろに回り私を抱きしめながら着ているコートで私を包んだ。高良の体温で体が温まる。誰もいないこの空間だからこそできる二人だけの秘密の時間。
「ずっとこうしていたい」
「私も仁と離れたくない」
高良の抱きしめる手に力が入った。キスをするでもなく私達は、ただただ暫くそうしていた。
「もう一度俺の彼女になってくれませんか?」
「なんで敬語なの?」
「いや、何となく。ちょっとビビってるからかも」
「顔見せて」
高良はコートで私を包んだまま、ぎこちない動きで私の前に回り込んだ。
「これでいい?」
「近い」
「だってまだ放したくない」
私はコートの中で高良を抱きしめた。
「私を彼女にしてください」