それは手から始まる恋でした
   ***

 幸せの寝息が聞こえる。

 木漏れ日が差し温かな光が部屋の温度をゆっくりと上げていく。俺の腕の中で大切な人が目をつぶっている。

 紬にそっとキスをする。この時間をどれだけ待ちわびていたか。もう戻ることのできない場所だと思っていた。

 紬のいない日々はつまらない。一度離れてみて分かると言うが、俺の場合は離れなくても分かっていた。紬以外ありえない。

 そっと紬の手を握るとゆっくりと握り返して眩しそうに目を開けて俺に微笑みかけた。

 大好きな紬の大好きな手をもう二度と離さない。
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