それは手から始まる恋でした
 手だ。
 彼は私の手を狙っている!

 たった数秒前まで大人な気持ちに浸っていた私はあっという間に現実に引き戻された。今も彼の唇が私の指に触れ、鼓動がどんどんと速くなっている。感じちゃだめだ。こんなこと、続けさせてはいけない。

 私は手を握った。高良は驚きやっと私の顔を見た。

「遅い」

 高良は何がと言わんばかりに不思議な顔をしている。

「高良さん、私の手がそんなに好きなんですか? 変態だったんですね」

 高良の顔は一気に赤くなった。

「は? 変態ってなんだよ。別に俺はお前の手なんてどうでもいい。ただお前が気持ちよさそうにしていたからだ」
「じゃあ、手はもういいです」

 高良は私の手を見ながら惜しむように離した。手以外には触れようともしないのか。あの時のキスも気まぐれだったのかもしれない。

「じゃあ、私はこれで。あと、お付き合いはなかったことに」
「な、何でだよ」
「だって高良さん私の手が触りたいだけですよね? そんなの彼氏じゃないです。私が誰に触れられようと高良さんには今後一切関係ありません」
「何? お前は俺のものだ。他の奴には触らせない」

 高良は私を引き寄せてキスをした。

 待ちわびたキスだった。
 それなのに何かが違う……。

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