それは手から始まる恋でした
 アイスを食べ終わった後、高良は仕事をするからとリビングに移動した。私はベッドの上で一人取り残された。このベッド本当に寝心地がいい。それにこのシーツはなんとも言えない肌触り。枕もホテルのようなふわっと私の頭を包み込むようなタイプだ。このベッドで眠れるなんて幸せだな。本当に住んでしまおうか……なんてね。

 高良は一晩中看病をしてくれた。夜中に目覚めるとリビングから英語で話をしている高良の声が聞こえてきた。こんな夜中に仕事をしていれば出勤がお昼になるのは当然と言えば当然だ。

 翌日は微熱のため会社を休むことにした。というよりは高良から止められた。そして今私の目の前には店からそのまま持ってきたかのような品揃えの人気のルームウェアとこれまた人気のランジェリーが可愛いものからセクシーなものまで取り揃えられ、床一面に広がっていた。

「あの、これは?」
「昨日実家の家政婦にお願いして一通り見繕ってもらった。どれでもいいぞ」
「はぁ。あの、下着のサイズよくわかりましたね」
「俺じゃないぞ。紬が寝ているときに家政婦が来てチェックしてた。ついでに言っておくが俺は今初めてここに入ったからどのサイズかも見ていない。安心しろ」
「それは別にいいけど。色々ありがとう」
「さっさとお風呂で汗流して、着替えて寝ろ。あとその部屋、物置部屋だったがこれからは紬の部屋だ。俺は基本リビングで仕事するタイプだから書斎は不要だ」
「はぁ」

 私は言われるがままお風呂に入った。高良は私がここに住むことを本当に望んでいるようだ。なんで私なんだろう。高良の部屋には女を匂わせるものは何もない。人に入られるのが嫌だと言っていたが、ここに女性が来ることはないのだろうか。いや、お金持ちだ。ここ以外にも女性を連れ込む用の部屋を持っていてもおかしくはない。

「お風呂ありがとう」
「あぁ」
「あのさ、本当にここに住んでもいいの?」
「え? あ、あぁもちろん!」
「ここに女性は連れ込まない?」
「は?」
「だからほら、その大人な関係の人とか、きっとそれ用に部屋借りたり、高級ホテルだったりするんだよね?」
「何言ってんだ? 確かにそういう女とはホテルとか相手の部屋に行ってたけど」
< 37 / 118 >

この作品をシェア

pagetop