それは手から始まる恋でした
私は高良にメールを送った。未だに個人の連絡先を知らないので業務メールの最後にお体大丈夫ですかと一文を添えたのだが、1時間経っても返事がない。早退したいが絶対怪しまれる。いや、私も体調が悪いと言えば……でも危険すぎる。定時で上がろう。そして必要なものを買って高良の家に行こう。
私は休んでいた間に溜まった仕事を必死に終わらせ、定時で会社を出た。会社と高良の家の間にあるスーパーは何もかもが高級志向。値段が高いが仕方ない。これは必要経費だと自分に言い聞かせて飲み物やアイス、雑炊の材料を購入した。
私はエントランスでインターフォンを鳴らした。結局あれから返事がなかったので来ることも言っていない。まだ寝ているかもしれない。アイスは溶けてしまうかもしれないが起きるまで待とう。そんなことを思っていたがすぐに応答があった。
「はい。どちら様ですか?」
女性の声だ。家政婦さんだろうか。
「高良さんと同じ部署の波野と申します。あの、高良さんは大丈夫ですか?」
「あら、わざわざいらしてくださったの? どうぞお入りください」
エントランスのドアが開いた。どうしよう。家政婦さんがいるならこの荷物怪しまれるかな。
高良の部屋の前のインターフォンを鳴らすと中から若くて綺麗な女性が出てきた。エプロン姿だが、どう見ても家政婦さんには見えない。
「あの、高良さんが大丈夫か確認したかっただけなので」
「まだ寝ているの。暇だから一緒にお茶しましょう。仁に女性客なんて初めて」
彼女は私の腕を引っ張り、家の中に上げた。私は来てはいけないときに来てしまったらしい。
彼女の着ている服は見るからに高そうだ。それにつけているエプロンは前デパートで見た数万円もする可愛いエプロン。もしかしたら許嫁?
「仁ったら目を離すとすぐに仕事しようとするから大変だったのよ。薬飲んで眠っちゃったけどね」
「そうですか。熱は?」
「今は微熱程度だから安心して。ちょっと渡したいものがあって久しぶりに訪ねてきたらゼーハー言ってて本当に面白かったの」
「面白い?」
「ええ。仁は気が強いから弱音吐かないし、ゼーハー言いながら俺は大丈夫だって、全然大丈夫そうじゃないのに面白いでしょ?」
「はぁ」
そんな話より仁と呼び捨てしていることが気になるし、我が物顔で紅茶を準備したことも気になる。そして、彼女の左薬指にキラリと光る高そうな指輪。
私は休んでいた間に溜まった仕事を必死に終わらせ、定時で会社を出た。会社と高良の家の間にあるスーパーは何もかもが高級志向。値段が高いが仕方ない。これは必要経費だと自分に言い聞かせて飲み物やアイス、雑炊の材料を購入した。
私はエントランスでインターフォンを鳴らした。結局あれから返事がなかったので来ることも言っていない。まだ寝ているかもしれない。アイスは溶けてしまうかもしれないが起きるまで待とう。そんなことを思っていたがすぐに応答があった。
「はい。どちら様ですか?」
女性の声だ。家政婦さんだろうか。
「高良さんと同じ部署の波野と申します。あの、高良さんは大丈夫ですか?」
「あら、わざわざいらしてくださったの? どうぞお入りください」
エントランスのドアが開いた。どうしよう。家政婦さんがいるならこの荷物怪しまれるかな。
高良の部屋の前のインターフォンを鳴らすと中から若くて綺麗な女性が出てきた。エプロン姿だが、どう見ても家政婦さんには見えない。
「あの、高良さんが大丈夫か確認したかっただけなので」
「まだ寝ているの。暇だから一緒にお茶しましょう。仁に女性客なんて初めて」
彼女は私の腕を引っ張り、家の中に上げた。私は来てはいけないときに来てしまったらしい。
彼女の着ている服は見るからに高そうだ。それにつけているエプロンは前デパートで見た数万円もする可愛いエプロン。もしかしたら許嫁?
「仁ったら目を離すとすぐに仕事しようとするから大変だったのよ。薬飲んで眠っちゃったけどね」
「そうですか。熱は?」
「今は微熱程度だから安心して。ちょっと渡したいものがあって久しぶりに訪ねてきたらゼーハー言ってて本当に面白かったの」
「面白い?」
「ええ。仁は気が強いから弱音吐かないし、ゼーハー言いながら俺は大丈夫だって、全然大丈夫そうじゃないのに面白いでしょ?」
「はぁ」
そんな話より仁と呼び捨てしていることが気になるし、我が物顔で紅茶を準備したことも気になる。そして、彼女の左薬指にキラリと光る高そうな指輪。