それは手から始まる恋でした
 何かが肌に当たる感触がした。ちょっとくすぐったい。でもなんか気持ちいい。眠っている自分の顔がほころぶのが分かる。唇が何かに触れた。高良とのキスを思い出す。

 でも高良のキスはこんなに強引ではない。

 誰?

「ん!」
「おはよう」
「港何してんの?」
「紬で遊んでた。そしたら嬉しそうに笑うから我慢できなくて」

 私の服は乱れていた。ブラホックも外されている。

「@#*!」
「ごめん。落ち着いて。何言ってるか分からない」
「だから、何してるの? 私たちしてないよね?」
「さぁ」
「てか、なんで港が私のベッドにいるの? 布団に戻りなさい」
「覚えてないの?」
「……」

 そういえばなんか妙にリアルな夢を見た気がする。いやあれは夢だったのか?

「じゃあ、紬は僕の彼女ってことで」
「冗談やめてよ。何もないよね、私たち何もなかったよね?」
「そんな怖い顔しないで。何もなかったよ。一緒に寝たけど」
「一緒に……それは添い寝だよね」
「添い寝以上のことする?」
「どうしたの? 港おかしいよ」
「からかってみた。こういうのも面白いなって」
「やめてよ。本当にびっくりしたんだよ。港は港のままでいて。こんな悪戯は彼で一杯一杯なんだから。オアシスが無くなったら私死んじゃうよ」
「あはは。冗談、冗談。オアシスはいつでもあるから戻っておいで」

 突然の港の変貌ぶりには驚いたが、いつもの港に戻った。初めて一緒に寝たのは港、初めて手に触れられたのも港だったのか。そして初めて私の体に触れたのも港。キス以外私の初めてって港じゃん!
 しかも港とキスしてしまった。寝ぼけていたとはいえキス。高良に合わせる顔がない。
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