それは手から始まる恋でした
「働きたいなら働かせてやる」
「え?」
「働きたいのか働きたくないのかどっちだ」
「働きたいです」

 なかなか次の派遣先も見つからない今ありがたい話だが、一体全体何がどうなっているのだろうか。高良に言われるがまま、私は高良が働く海外営業部に足を踏み入れた。英語もできない私が海外営業部で何ができるというのだろうか。

「部長、波野さんをこの部署で契約してください」
「高良君何ですか、いきなり?」
「波野さん契約社員で、今日で契約終了らしいので、新たにこの部署で契約してください。俺の補佐をしてもらいます」
「でも、君の補佐は昨日面接して決めたばかりじゃないですか」
「それは白紙にしてください。まだ契約していませんよね」
「それはそうですが、もう総務には話をしているから内定の連絡をしているかもしれませんよ」

 高良はすぐに総務に電話し確認した。たまたま担当者が忙しくまだ連絡していなかったらしく、私は海外営業部で働くことになった。
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