それは手から始まる恋でした
 平日は変わらず高良から仕事のメールが届く。電話は他の人にはきているようだが、私にはメールだけ。声も聞けない。港からは連絡はしない方がいいと言われたので我慢している。

 それに他の人と何かあってもバレないようにしてほしいと言ったのは私なので女性を連れ込んでいても何も言えない。

 金曜になり仕事を終えると私は予約していたエステに向かった。1日では何も変わらないと分かっているが、前より少しは綺麗になりたいとの思いから気休めのエステだ。エステは最高の心地よさだった。

 エステティシャンが男性なら高良は大激怒だろうが、女性なので触れられても怒られないだろう。明日はさすがに疲れているだろうから明後日くらいには少しは触れてくれるだろうか。

 家に帰り鍵を差し込み玄関を開けた。あれ? 電気つけっぱなしだったっけ?

「不良娘。こんな遅くまでどこをほっつき歩いていたんだ」
「高良さん」
「いつになったら名前で呼ぶんだ?」
「なんで? 帰ってくるの明日じゃなかったっけ?」
「心配なら一人にするなって言ったのは紬だろ。スケジュール調整して詰めに詰めても1日しか縮まらないってどんな過密スケジュールだよ」
「女連れ込んでたんじゃ」
「はぁ? 俺が毎日どんなに仕事してたかメール見れば分かるだろう。女連れ込む時間なんてあるわけ……てか俺をどんな男だと思ってんだ?」
「ごめん、全然連絡ないからもう見限られたかと。でもね、準備してたの。ちょっと待ってて」
「ダメ。待てない」

 高良は私を抱きしめ優しくキスをした。私が待ちに待った甘いキス。

「なんだこの匂い。まさか男と風呂に入ってきたのか?」
「違います。エステ。綺麗な肌を高良さんに触れてもらいたくて」
「男の」
「女性にしてもらいました」
「今日我慢できなさそう。嫌だったら殴ってでも俺を止めろ」
「何ですかそれ? 高良さんとなら嫌なわけないじゃないですか」
「ご褒美だ」

 高良は再びキスをした。とても優しくそれでいて情熱的で激しいキスは今までとは違う大人なキスだった。高良の手は私の手を掴み私の指は高良の口の中で彼の舌と絡まり2人の目線が合うと高良は私をベッドの上に押し倒し服をゆっくりと手繰り寄せ私の肌を露出していく。

「んっ! ダメ……下着が」

 今日のランジェリーはセクシーじゃない。可愛らしい私好みのド甘なやつだ。この年で着ていることを高良は絶対にバカにする。

「下着?」

 高良はゆっくりと私の服を脱がせて上から私の姿を見下ろしている。恥ずかしい。手で隠そうとしたが高良が阻止した。

「違うの。これは一度着てみたいなって思ってただけで、それに明日は大人なセクシーなものを着て臨むつもりだったの。今日は」
「可愛い。恥ずかしそうに言い訳する紬も可愛い」

 そして高良は私の胸にキスをした。ゆっくりと高良の手でブラ紐が外されていく。高良の指が肩や腕に触れていく。もう片方のほんのり冷たい手が私のくびれに触れ、ゆっくりと胸の方に上がってきた。

 高良の唇、そして舌の動きを胸で感じる。初めての感覚に私の脳はパンクした。

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