それは手から始まる恋でした
幸せの絶頂
 触れられたいと悩んでいた日々が嘘のようにこれでもかというほど色々なところに触れられて、私の体は高良の香りに包まれた。

 週末に届いた荷物を開けるとそこにはブランド物のバッグに靴、ハンドクリームにボディークリームと私へのプレゼントがぎっしりと詰まっていた。空港で手あたり次第買ったらしい。手荷物で持って帰らずに送るというところが金持ちの発想だ。
 こんな高級品は貰えないと一応断ってみたものの、じゃあ捨てると言われたのでありがたく貰うことにした。

 靴を履いてみろと言いながら、私に靴を履かせる姿はまるでガラスの靴を履かせる王子様のようだったが、その手つきは明らかに私の脚を触りたいという下心が見え見えだった。

 ハンドクリームを塗ってやると言っては手を触り、ボディークリームは届かないところもあるからなと言いながらくまなく全身に触れられた。そして夜は大人な流れに……とは言いつつも、残念ながら開かずの扉の攻略にはもう少し時間がかかりそうだ。

 そして今朝は出勤しようとする私を離さないほどの溺愛ぶりだった。可愛すぎて仕事を休みたかったがそこは大人だ。ちゃんと定時に出社した。

 その後出社してきた高良は明らかに顔が歪んでいる。皆は海外出張中に何かあったと思っているようだが、帰ってから何かがあったのだ。

 帰宅後、週末できなかった片付けを始めた。高良が出張から帰って来たまま放置されていたスーツケースには多くのお菓子が詰め込まれていた。着替えはワイシャツとスーツくらいだった。下着類は全て捨ててきたそうだ。ワイシャツをまとめて洗濯し、お風呂掃除をして夕食を作り終えた頃に高良は帰って来た。

「ただいま」
「お帰り」

 高良は私に近づくとただいまのキスをした。そのまま私は壁に押し当てられ昨日の続きが始まった。

「仁……ご飯食べよう」
「紬食べてから」

 高良は私の首筋を攻めてくる。

「んっ……ダメ……ご飯冷めちゃう」

 私は何とか発情する高良をなだめ食卓に彼を座らせた。高良は私を隣に座らせ手を握ったまま食べ始めた。

「食べられない」
「俺が食べさせてやるから」

 高良はスープを飲むとそのまま私にキスをしてきた。ゆっくりと温かいものが私の口の中に入ってくる。

「普通に食べたい」
「可愛くない」
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