それは手から始まる恋でした
「そんなに痛いならやっぱり今日は休め。命令だ」
「ううん。大丈夫。仁がいてくれて本当に幸せ」

 高良はぎゅっと私を抱きしめてくれた。
 その後、高良はぎりぎりまで脚のマッサージをしてくれてタクシーも手配してくれた。高良はいつもどおり出社すると言っていたがすぐに出社してきた。

 私をチラチラ見ている。こんな心配性がどうしてドS御曹司なんて言われるのだろうか。確かに仕事の指示は的確で容赦ない突っ込みだが、言っていることは正しいし自分で気が付けるようになれば仕事ははかどる上にスキルだって身に着くような的確なアドバイスだ。相手がそれに気が付くか気が付かないかでこんなに印象が変わるものなのだろうか。

 お昼は高良が私を連れだしたため皆は驚いていた。高良も私の食べっぷりに驚いていた。どうしてもお腹が空き、食べると少し痛みは落ち着く。

 食事から戻った私は昼食会議だったと嘘をついた。皆は納得し昼食時間も削られた私を憐れんでいた。申し訳ないが高良からそう言えとの指示だった。高良は昼食後仕事のため外出しその日は会社に戻って来なかったが、1時間に1回心配するメッセージが届いた。こんなにまめな高良は初めてだ。

 私は家に帰り、ソファーの上で横になり体を丸めてテレビを見ていた。この数日は何もする気が起きない。今日のご飯は高良が帰りに買ってきてくれるようだ。

「ただいま。ごめん遅くなって」

 高良が帰って来た時には私は眠っていた。何となく聞こえてくる高良の声と顔に触れる高良の手の感触を感じながら私はゆっくりと目を開いた。

「よかった。生きてて」
「死なないよ。心配しすぎ。でもありがとう」
「そんな青白い顔してたら誰だって心配になるだろ」
「誰も気づかないよ」
「ご飯食べるか?」

 高良は私の頭を撫でながら言った。彼の優しさで初めてこの辛い日々が少し好きになった。

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