それは手から始まる恋でした
「知りたいの。あの日何があって仁が私を選んでくれたか」

 高良は私を連れてソファーに移動し手を握って話を始めた。

 穂乃果さんの結婚式の後、2次会、3次会どこまで行ったのかも覚えていないくらい飲んだそうだ。可愛い妹が結婚するって言うのはそういうものだと言っていたが、私には高良が彼女のことが好きだったとしか思えない。

 深くは教えてくれなかったが、私の差し出した手はあの日の高良を癒したようだ。もう一度会いたいと思っていたら会社で会って運命を感じたとか。

 実際、私の顔を見ても気が付かなかった高良は私ではなく私の手に運命を感じていたのだろう。

 高良にも何故、他の男に私を触れさせたくないと思うのかは分からないそうだ。そんな感情は初めてで戸惑っていたと。ただ、一緒にいる時間が増えれば増えるほど私のことを可愛いと思うようになったらしい。そして高良は私に口づけをした。そして高良は一旦リビングから出ていった。

 私もそうだ。高良のことを何故好きなのか分からない。他の女性と高良が私と同じようなことをしていると思うと胸が痛む。高良を愛おしいと思う。好きになることに、独占したいと思うことに理由はないのかもしれない。

 説明ができない感情があるからこそ、そう思うのかもしれない。もし高良が私と同じ気持ちなら嬉しい。これから私たちはどうなるのだろう。

 高良は何かを手に持って戻ってきた。

「開けてみて」

 高良からもらった袋から小さな箱を取り出した。この大きさ想像がついてしまう。でもピアスって線もある。期待してがっかりはしたくない。
 そんな私の心配はいらなかった。箱を開けるとシンプルだが可愛いいリングが入っていた。

 高良はリングを取り出すと私の右の薬指に嵌めた。

「会社で見せびらかせ。最高の彼氏がいますって」
「うん。ありがとう。嬉しい」

 嘘じゃない。結婚の話がでるなんて期待していなかった。高良と付き合っていることは言えなくても彼氏がいることを言っていい、ただそれだけで私には十分だ。

「私もプレゼント持ってくるね」

 私が立ち上がろうとすると高良は私を止めた。
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