それは手から始まる恋でした
「は? 何がどうなってそんな話になってる。俺が26だと別れるのか?」
「違う。別れ話されていると思って聞いてて」
「なんでそうマイナス思考なんだ。俺が言いたいのは、紬が安心できるように俺を繋ぎ止めといて欲しいってこと。もっと紬からハグしてきたりキスしてきたりもっと甘えて欲しいっていうか、それにまだ俺もガキな部分があって粗相をしでかすかもしれないから紬がちゃんと俺を好きってことをだな……」

 高良は恥ずかしそうにもごもごと言っている。こんな高良は珍しい。会社では絶対に見られない高良だ。

「よかった。うん。できるか分からないけど頑張るね」
「頑張るな。普通でいい。素直に、ただちょっと俺を求めてくれたら……」

 私は高良を目一杯抱きしめてキスをした。もちろんその後の高良は優しかった。幸せがまだ続いている。

「せっかく作ってくれた朝食冷めちゃったね」
「あんなの何度でも作ってやる。それよりもうちょっとこうしてたい」

 高良はベッドの上で私を抱いたまま起きようとしない。

「俺とそのソフレはどっちが寝心地いいんだ?」
「え?」
「昨日考えていたやつだよ」

 高良は何故か比べたがる。

「あ、港」
「ミナト? 苗字か? 名前か?」
「名前だけど」

 高良の腕にわずかだが力が入った。

「でも港は女みたいなもんだよ。今は男らしくなったけど出会った頃は私より可愛かったんだから」
「でもそいつは紬にキスしてきたんだよな?」

 あの時はキスなんて気にもしていなかったのに。

「遊びだよ。港もモテるからそういうの慣れてるんだ」
「会わせろ」
「え?」

 高良の目は血走っている。

「今日でもいい、明日でも明後日でもできる限り早く会わせろ」
「いや、それは……」

 高良の迫力に負けた。港に謝りながら連絡したら「僕も会いたかった! 行く行く!」となんとも軽い返事が返って来た。港は分かっているのだろうか。
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