それは手から始まる恋でした
週末は港と楽しく過ごした。学生の頃から仲が良かったせいでお互いの好き嫌いが分かっている。港はゲームをしながら私は本を読んだり勉強したりしてそれぞれの時間を楽しんでいた。
不動産屋にも一緒についてきてくれたが、港はセキュリティー、築年数、立地とあらゆる理由をつけて却下していた。港の言っていることも分かるがこれではいつまで経っても転居先が見つからない。
翌週高良は出張だった。急な出張だったのでもしかすると私と一緒にいるのが嫌で出張を入れたのかもしれない。そんなに会いたくなければ私をクビにすればいいのになんて思ってしまう。
「紬は仁ちゃんにどうしてほしいの?」
「別に。普通に接してほしいだけ」
「紬の話聞く限り仁ちゃんらしい気がするけどな。ほら、ドS御曹司だっけ?」
「そうかもしれないけどさ」
「紬は紬を好きな仁ちゃんに戻って欲しいだけでしょ? 自分から振っておいて都合のいい女」
「グサッ。港のイジワル」
「あはは。面白い。甘やかすだけじゃ駄目だからね」
港の家に居候を初めて2週間が経つ。
少しずつだが港との距離が近づいている気がする。
英会話のオンライン授業にも後ろからひょこんと顔を出し、悔しほど流暢な英語で私の彼氏だと冗談を言っていた。
これ以上港に甘えるわけにはいかない。
「今週末に出ていくね。結局3週間もお世話になっちゃったね」
「は? 不動産屋の紹介全部断ったでしょ? 仁ちゃんの所に戻るの?」
「違うよ。実は会社帰りにいくつか不動産回って決めてきたんだ」
「盲点!」
「ごめん」
「で、どんなとこ?」
「それは……怒らない?」
「僕が怒りそうなところを契約したってこと?」
「ごめん。だってそうでもしないと決まらなかったから」
「決めなくていいじゃん」
「だってそろそろ彼女とか作りたいんじゃないかなって」
「僕そんなに飢えてる感じ? ……ごめん。紬こっちにきて」
私は少し距離をおいて港の側に座った。港は私の後ろに回り込み、後ろから抱きしめてきた。
「港?」
すぐに離れようとしたが、港の力には勝てなかった。私の体は緊張したまま港に抱きしめられていた。暫く沈黙が続いた後、港は話し始めた。
「ずっとこうしてみたかった。僕ね、紬が好き。でもその好きってなんだかよく分からなかった。紬の嬉しい時も辛い時も変わらず側にいたい。これ以上のことをしてみたい、紬をめちゃくちゃにしてみたいと思ってたけど理性が勝ってる。これ以上何かすることで紬を失うのは僕には耐えられない。僕ね、最近ずっと怖かった。紬に触れたいと思ってしまう自分がいて、紬を離したくないって思う自分がいて、狂ってしまいそうな自分がいて。でもこうしてみてやっと分かった。僕は紬の彼氏にはなれない。僕はずっと紬の親友でいたい」
私は告白もされていないのにフラれている。
不動産屋にも一緒についてきてくれたが、港はセキュリティー、築年数、立地とあらゆる理由をつけて却下していた。港の言っていることも分かるがこれではいつまで経っても転居先が見つからない。
翌週高良は出張だった。急な出張だったのでもしかすると私と一緒にいるのが嫌で出張を入れたのかもしれない。そんなに会いたくなければ私をクビにすればいいのになんて思ってしまう。
「紬は仁ちゃんにどうしてほしいの?」
「別に。普通に接してほしいだけ」
「紬の話聞く限り仁ちゃんらしい気がするけどな。ほら、ドS御曹司だっけ?」
「そうかもしれないけどさ」
「紬は紬を好きな仁ちゃんに戻って欲しいだけでしょ? 自分から振っておいて都合のいい女」
「グサッ。港のイジワル」
「あはは。面白い。甘やかすだけじゃ駄目だからね」
港の家に居候を初めて2週間が経つ。
少しずつだが港との距離が近づいている気がする。
英会話のオンライン授業にも後ろからひょこんと顔を出し、悔しほど流暢な英語で私の彼氏だと冗談を言っていた。
これ以上港に甘えるわけにはいかない。
「今週末に出ていくね。結局3週間もお世話になっちゃったね」
「は? 不動産屋の紹介全部断ったでしょ? 仁ちゃんの所に戻るの?」
「違うよ。実は会社帰りにいくつか不動産回って決めてきたんだ」
「盲点!」
「ごめん」
「で、どんなとこ?」
「それは……怒らない?」
「僕が怒りそうなところを契約したってこと?」
「ごめん。だってそうでもしないと決まらなかったから」
「決めなくていいじゃん」
「だってそろそろ彼女とか作りたいんじゃないかなって」
「僕そんなに飢えてる感じ? ……ごめん。紬こっちにきて」
私は少し距離をおいて港の側に座った。港は私の後ろに回り込み、後ろから抱きしめてきた。
「港?」
すぐに離れようとしたが、港の力には勝てなかった。私の体は緊張したまま港に抱きしめられていた。暫く沈黙が続いた後、港は話し始めた。
「ずっとこうしてみたかった。僕ね、紬が好き。でもその好きってなんだかよく分からなかった。紬の嬉しい時も辛い時も変わらず側にいたい。これ以上のことをしてみたい、紬をめちゃくちゃにしてみたいと思ってたけど理性が勝ってる。これ以上何かすることで紬を失うのは僕には耐えられない。僕ね、最近ずっと怖かった。紬に触れたいと思ってしまう自分がいて、紬を離したくないって思う自分がいて、狂ってしまいそうな自分がいて。でもこうしてみてやっと分かった。僕は紬の彼氏にはなれない。僕はずっと紬の親友でいたい」
私は告白もされていないのにフラれている。