鎖から放たれた蝶々は美しく羽ばたく
「捨てる、しか、ないのかな……」

きっと起きたときにまだこれがあれば、袴田課長の機嫌は悪くなるだろう。

「せっかく、神月さんがくれたのに」

今朝は迷惑だったそれも、彼を知って嬉しいものへと変わっていた。
ピンクと茶色の薔薇の花束はきっと、私のあだ名である苺チョコをイメージしてくれたのだろう。

「捨てたくないな。
……捨てたくないよ」

花束を抱き締めて、キッチンに座り込んだ。
ぽたぽたと涙が、花弁を揺らす。
結局、ベッドには行けずに、そこで神月さんの代わりに花束を抱き締めていた。

新聞配達の音で目が覚める。
キッチンで蹲ったまま、うとうとしていた。

「どこか、隠せるところ……」

考えて、流しの下に花束を突っ込んだ。
少し花は潰れたが、捨てるよりはずっとましだ。

「……さむ」

もう十一月も下旬にさしかかろうとしているのに、ほぼ玄関のキッチンで夜明かしはマズい。

「……」

「ぐぉー、がー」

ベッドは袴田課長が大の字で寝ていた。
ベッドにこない私を不審にも思わず、高いびきで眠れるあたり、さすがというか。

「……」

軽く押して隙間を作り、そこへ滑り込む。
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