鎖から放たれた蝶々は美しく羽ばたく
それに複雑な気持ちで、じっと自分の靴を見つめる。
袴田課長はこうやって私に期待させるようなことをするが、彼には最愛の奥様がいる。
そして彼が、私を好きになることはない。
それははっきりと彼の口から言われたのだから、間違いない。

今日も仕事は何事もなく進んでいく。

「チェック?
ストライプも捨てがたい、よね……」

ブツブツ言いつつ、画面へペンを走らせた。
私はここ、『ルーナ化粧品』の商品企画部で、パッケージデザインの仕事をしている。
以前は他の、外注で受けたデザインを主にする会社に勤めていた。
そのときにたまたまルーナ化粧品の仕事に関わり、袴田課長から引き抜かれていま、ここにいる。

「黒とシルバーは好きだけど、地味……?」

「チョーコ。
会議、はじまんぞー」

袴田課長から声をかけられ、現実へ引き戻される。

「えっ、もうそんな時間です、か?」

視線を向けた時計は、会議のはじまる五分前を示している。

「構想中に悪いが、会議のお時間です。
……先、行くからなー」

少しだけおどけて見せた彼は親指でくいっ、くいっ、と会議室のある方向を指し、歩いていく。

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