鎖から放たれた蝶々は美しく羽ばたく
「雨降ってる……」

電車を降りたら、雨が降っていた。
しかも、しとしとくらいならまだしも、ざーざーとけっこう本降りで。

「どうしよう……」

コンビニで傘を買えばいいのはわかるが、住んでいるマンションまで走れば十分もかからない。
そして先週、同じ状況で買ったビニール傘が、我が家の玄関にはある。

「傘、増やすのも困るし」

中身を濡らさないようにバッグを上着の下へ入れて抱え、私は足を踏み出した。



「くちゅん!
……うー、寒い」

思いっきり布団に丸まってみても、無駄。
雨の中を傘も差さずに走ったりしたせいか、夜中から寒気が止まらない。

「だいたい、袴田課長が……」

見計らったかのようにマンションに着いた途端、課長から電話がかかってきた。
用件自体はたいしたことではなかったが、永遠、来週にやってくる結婚三ヶ月記念のサプライズの話を聞かされた。
そろそろ寒くなってきた十月も半ば、濡れた身体でそんな状況になれば……当然、熱も出るというのもだ。

「寒い……寒い……」

ガタガタ震えながら、眠れば朝には治っている! と思い込んだものの。

「あー……これは無理だ……」

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