鎖から放たれた蝶々は美しく羽ばたく
相変わらずあたまはガンガンするし、関節も痛い。
熱はいまだに、停滞中だった。

『玄関の前に、差し入れ置いとく。
どうせ、薬すら飲んでないんだろ。
食えそうなら少しでも食って、薬飲んで寝ろ。
お前、それ以上痩せたら、消えるからな!』

いつどおりひと言多いが、そこはスルーしておく。

「ありがとう、ございます……」

『じゃあな、お大事に』

合図するかのように電話が切れると同時に、ピンポンとチャイムが鳴った。

「……」

半ば、這うようにベッドを出て玄関へ向かう。
ドアを開けたら大きなレジ袋がどさっとふたつも置いてあった。

「……重い」

引きずって袋を部屋の中へ引き込む。
ひとつには二リットルのイオン飲料が二本も入っていた。
もうひとつには薬と、プリン、アイスにゼリーと入っている。

「……助かる」

イオン飲料を開け、ごくごくと身体へ流し込む。
汗を掻いて乾いていた身体は、一気に半分ほど吸収した。

「……アイス、なら、入る、かも」

入っていたのはご褒美にしか買わない、ダッツのバニラだった。
少し溶けて食べ頃になっているそれへ、スプーンを突っ込む。

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