鎖から放たれた蝶々は美しく羽ばたく
「履歴書と職務経歴書、あとポートフォリオ持って明日、俺のところへ来て。
じゃあ」

「えっ、あっ!?」

混乱する私を無視し、彼は言いたいことだけ言ってさっさと帰っていった。

「……わけわかんない」

相談するほど親しい人もいないし、本当に明日、彼の元へ行くにしても休みをもらわなければならない。
仕方ないので職場へ戻り、上司へ相談した。

「あの。
明日から俺の部下だから履歴書等を持ってこい、と言われたんですが……。
どうしたらいいんでしょうか」

「あー……」

上司の口から、ため息なのかなんなのかわからないひと言が長く発せられる。

「……噂は、本当だったのか……」

噂とはいったい?
困惑をする私をよそに、上司は遠い目をしていた。

「いや、ある日突然、『明日から俺の部下』とか言って社員を引き抜いていく、とんでもないヘッドハンティングする奴がいるって話は聞いたことがあったんだ。
本当にいるとはな」

「はぁ……」

ってことは、私はあの人に、ヘッドハンティングされたってことですか?
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