鎖から放たれた蝶々は美しく羽ばたく
「君の仕事はパッケージデザインと、それに伴う諸々のデザイン。
お給料は……」

これで不満はないだろ、とばかりに片頬を歪ませて彼がにやりと笑う。
確かに彼が口にした額は、いまいる印刷所よりも遥かに多かった。

「早速、今日から働いてもらうわけだけど……」

「へ!?」

「課長!」

私と女性から同時に、彼へ声が飛んだ。

「今日は面接だけです。
まだ人事へ話も通してないんですから!」

あたまが痛い、とばかりに女性は指先で額を押さえている。
あとで知ったが彼女――国元チーフはこの頃、袴田課長のリードを握る係をしていた。

……いや、上司に対してリードというのはいかがなもんかとは思うが。

でもさ!
ここまでの回想やなんかでお察しのとおり、あの人は自由気ままな犬と一緒なのだ。
なので誰かがリードを握り、勝手にどこかへ行ってしまわないようにしなければならない。
それが会社では、以前は国元チーフ、いまは私ってわけ。

「えー、俺がチョーコがいいって言ってるから、チョーコに決まりなのにー」

いきなり、名前で呼ばれた。
しかも呼び捨てどころかきっと、カタカナで〝チョーコ〟。
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