鎖から放たれた蝶々は美しく羽ばたく
本当に自由すぎる。

「履歴書等、見せていただきました。
これに関しては特に問題ないかと思います。
ただ」

言葉を切った国元さんの視線が、私の顔で止まった。

「うちは化粧品会社です。
その長い前髪はちょっと……」

「……」

自分から希望してここに来たのではない。
それでも、惨めになって視線が床へ落ちる。

「なんでそんな、緞帳みたいな前髪してんの?
少しくらいのブサイク、いまどき化粧でなんとでも……」

席を立ってきた袴田課長が私の前髪に触れる。

――その瞬間。

「触らないで!」

反射的に思いっきり、その手を払いのけた。
彼は笑顔のまま固まっている。
国元さんもなにが起きたのかわかっていないようだった。

「……あ。
す、すみません。
失礼します」

自分のやってしまったことに気づき、荷物を掴んで立ち上がる。
少しだけ、あのルーナ化粧品で働けるなんて凄い、とか舞い上がっていた。
でもここは、私なんかが来る場所じゃなかった。

「待てよ」

呆気にとられたままのふたりを残し出ていこうとしたら、袴田課長から手を掴んで止められた。

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